耳垢イチゴジャム

こじらせ女の独り言

八方塞がり

私は3年前から営業職に就いている。

営業というのは「大変」だと思われがちだが、実際そんなことはない。売れる製品、必要とされている製品を売る営業マン達は大変ではないのだ。しかも、製品の値段が高ければ当然年収も高い。

ただ、売れない製品、必要とされていない製品を売る営業マンは大変どころの話ではない。また、製品の値段が安ければ年収も低い。

私は後者に属している。

売れない製品、必要とされていない製品を売っている。会社から監視され、最低限の月給を支給され、親戚一同からもらうお年玉よりも少ないボーナスを支給される。



会社の方針、在り方に嫌気がさし、辞めたいと思うようになったこともある。



しかし、最近は会社が嫌とは思わなくなった。上司のことを嫌いになりはじめてしまったのだ。

上司はもともと性格が悪いと他の先輩から聞いていた。私は被害を受けたことがなかったので分からなかった。しかし、先輩達が辞め、私も被害を受けるようになった。直接被害を受けなくても、他人が嫌な思いをしてるところを見るだけで気分が悪くなることもある。

具体的な話は避けるが、上司の性格の悪さ、図太さ、無神経さにはうんざりする。しかし、当の本人は自分がおもしろく、ユーモラスで気遣いができ、営業もそこそこできていると思っている。

私には全く理解できない人間だ。



彼には嫁がいる。
嫁はどうしてこんな男を選んだのか。職場が違えば見えてくる物も違うのだろうか。謎である。

ひさしぶりに他人の不幸を願うようになった。
そんなことをしても意味がないのは分かっている。



昨日、営業終わりに上司から嫌味を言われた。今年の夏から精神を病んでいる私(上司には言っていない、言ったところでおもしろおかしく噂する最低男だからだ)にはキツかった。

嫌味がずっと耳に残る。彼はよかれと思って、アドバイスとして、私にがんばってほしくて言ったのかもしれない。

私にはそれが重荷よりももっと重圧のかかる言葉、うまく例えることができないが、苦しかった。



ひさしぶりに薬を飲んだ。効いたのか効いてないのか分からないが、楽しみにしていた酒を飲むことも、泣くこともできなかった。いつの間にか寝ていた。

なにも変わらない。

逃げてもなにも変わらない。

逃げていないのにそう思ってしまう。



ただ今は上司の声を聞きたくない、顔も見たくない。いっそのこと打ち明けてしまおうか。

鬱病です」と。










打ち明けてなにになるのだろう。











つらい。

一人でいるとつらい。



誰かと話す気分にもなれない。

昨日は食欲もなかった。

悪気がある人間なんてこの世にはいないのではないだろうか。私の思い過ごしではないか。

きっとそう思われる。

私もそう思うことがある。








終わりだ。
なにもかも終わりだ。